英語を習いたての頃、どうしてスペルと発音が違うんだろう?と思いませんでしたか。要するに知らない単語に出会ったときに、どう発音するか分かったもんじゃない。
ちょっとだけ思い出話。中一のときESSというクラブ(なぜかその1年間だけ我が母校に存在した幻の文化部)に所属していた。後に国立大医学部へ行く超勉強ができたヨシオ君(12歳)がクラブの時に先生(ミスター小林)に、スペルと発音が違うので発音記号で書くようにしたらいいのに、と言っていたのを横で聞いていた。おいおい発音記号なんてまだ習ってねぇよ、できるやつは言うことが違うなと思った。結局、中高大と学校の授業で発音記号を習うことはなかったのだが。ヨシオ君もスペルを覚えるのに苦労してたんだね。
それで疑問だったのがイギリス人は何を考えているんだということですね。こんなでたらめなスペルで不便じゃないのかと。そんなこと言ってもスペルは丸ごと覚えるしかないんだけど、なんか釈然としないというか納得できない物が残るじゃないですか。今の言葉で言うと、イギリス人ってバカなの?死ぬの?ということになるか。
ここ数年いろいろな本を読んで大体自分なりに納得できたことを惜しげもなく発表します。ざっくりした話しですが言語学の専門家でもないので子細には拘らなくてよいでしょう。英語を文字で残そうとし始めの頃、専門用語でいうと中英語(ME)の頃までは発音通りに書いていました。英語の音素が40以上でアルファベットが26文字なのでそもそも足りないのですが2文字で1音を表す(thとか)などして大体一致していたんです最初は。なんだそうなんだ、と一安心。アングロ・サクソンもばかじゃなかったんだ。当時は発音通り書けばよかったから同じ単語でも人によって綴りが違ってたりしたらしい。だんだん綴りが統一されてきてグーテンベルクが印刷技術を発明して本が出版されるようになると綴り字もほぼ固定されました。不幸なことにその前あたりから英語に発音の大変化(大母音推移)が起こったらしい。なぜ起こったかは誰にも分かりませんが兎に角、英語の発音が変わった。音は変わったけれど印刷された文字は変わりようがありません。以上がでたらめなスペルになってしまった大まかな流れです。
これを修正しようという動きもあったようです。名前は忘れましたが、ある人は、我が母語は発音とスペルが違いすぎる、ghoti と綴って[fish]と読ませることすら可能だ、と言って嘆いたそうです。すなわちenoughの[f], women の[i], nation の[sh] です。gh で[f]と読ませ、oを[i]と読ませ、ti を[sh]と読ませる単語がある。それを組み合わせるとghoti と書いて[fish]と発音し得るというわけです。その人か別の人か忘れましたが、こんなことではいかん発音とスペルを合わせよう、という運動を起こし本を出した。アルファベット26文字じゃ足りないので新しい活字もこしらえて発音した通りのスペルで、音声と文字を一致させようと主張した。実にもっともな主張だが残念なことにその本は書いた本人にしか読めなかったというオチで終わった。そして音と文字を統一できたとしても発音はこれからも変わる可能性もあるし、スペルはこのままでいいのだ、と言ったのは、哲学者のフランシス・ベーコンだという。
この一文が中学生の素朴な疑問に答える一助になれば幸いです。
0 件のコメント:
コメントを投稿