実はある歴史的大人物の英文法学習にもこの3原則が当てはまるのです。その人物とは、「奴隷解放の父」と言われるアメリカ合衆国第16代大統領のエイブラハム・リンカーン(1809-65)です。彼はよく知られているように、丸太小屋に生まれながらも、最終的にはホワイトハウスの主になりました。そのリンカーンの出世の秘密は何だったのかと言うと、ひとつには英文法の学習がありました。リンカーンが23歳のときに州議会議員に立候補する少し前のことです。下宿先の主人である学校教師と朝食を共にしている時に、「英文法の完全な知識は、政治で出世したり、社会で立派に見えるために不可欠なものだよ」と言われました。そこでリンカーンが、「では、文法書はどこに行けば手に入るのですか」と聞くと、その教師は6マイル(約10キロ)離れた所に住む農民が一冊持っていると答えました。すると彼は即座に朝食の席を立ち、歩いて文法書を借りに行きました。ここからリンカーンの猛勉強が始まります。その方法は、文法書を最初から最後まで何度も通読すること、ポイントが分からないときは下宿先の教師に質問すること、そして友人に文法書の内容を質問してもらい理解や暗記の程度を試すこと、などでした。まさに「全体を学ぶ」「理屈にこだわる」「問題をこなす」という3原則通りです。こうしてリンカーンは驚くべき速さで文法規則を身につけたと言います。学校教育をほとんど受けていないリンカーンが政治の世界で活躍し、「人民の、人民による、人民のための政治」という名文句を残せたのは、若かりし頃に猛勉強で物にした文法の力が大きかったのです。私たちはリンカーンのような偉業を達成することはできませんが、せめてその文法学習法くらいは真似できるのではないでしょうか。(『快読英文法』ベレ出版、池田真、7ページ)
リンカーンは、もちろん英語は話せたはずなのに、「英文法の完全な知識」を勉強したのだという。出世するためには不可欠であった。我々が身につけるべきは、通じればいい英語、話す英語ではなくヤング・リンカーンが猛勉強したという英文法の方ではないか。
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