2013-08-13

茂木健一郎、連続ツイート「ペンローズのこと」

  • 連続ツイート第1006回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、ちょっと世間とは、関係のない話。 posted at 08:46:56
  • ぺこ(1)脳科学を始めた理由は、何ですか、と時々聞かれることがある。博士号を取得する直前の2月まで就職先が決まらないで、当時理化学研究所に立ち上がった、伊藤正男さんの脳科学研究グループに拾っていただいた、というのが主要原因だけど、その前に複線になる出来事があった。 posted at 08:48:33
  • ぺこ(2)複線−>伏線です。それは、博士課程在学中だった1989年に出版された、Roger PenroseのThe Emperor's New Mindを読んだこと。これは、今日に到るまで、もっとも衝撃を受けた本の一つだったと言ってよい。人工知能では足らず、意識を解明しなければ posted at 08:49:37
  • ぺこ(3)人間の知性は解けないということを理路整然と説いた名著。世の中には二種類の人間がいる。ペンローズの指摘に共感する人間と、馬鹿にする人間と。残念ながら今の科学は後者が牛耳っている。それはさておき、意識の謎に関連して、量子力学が未だに不完全な体系であることを指摘する posted at 08:51:13
  • ぺこ(4)ペンローズの筆致は鋭かった。コペンハーゲン解釈によれば、波動関数が観測によって収縮する。それで良いではないか、ということになるが、ペンローズは重要な指摘をする。すなわち、シュレディンガーの猫で言えば、猫が生きている状態と死んでいる状態の波動関数の間の posted at 08:52:19
  • ぺこ(5)任意の線形結合は形式的に等価であるはずであり、なぜ、観測後、猫が生きている状態、及び死んでいる状態が、波動関数が収縮する「先」のマクロな状態の「基底」でなければならないのか、それが理論内部からは与えられないということである。つまり量子力学は不完全。 posted at 08:53:40
  • ぺこ(6)そんなことを、先ほどイイネ! した田森佳秀(@Poyo_F)のシュレディンガーの猫に関するツイートで思い出してしまった。元に戻るけど、私が脳科学を始めた重大なきっかけの一つはペンローズであり、その意味で多くの脳科学住人と意見が合わないのは宿命かもしれない。 posted at 08:55:23
  • ぺこ(7)ペンローズとは、ケンブリッジ留学中に会った。その時のことは、www.qualia-manifesto.com/penrose.htmlに書いてある。その後、京都に来たとき、夕食を共にした。その時 @Poyo_Fもいて、万能チューリング機械のコードの誤植の話をしていた。 posted at 08:57:32
  • ぺこ(8)ペンローズに最後に会ったのは、オックスフォードにペンローズを訪ねて、その時のことが新潮社の『考える人』の記事になった時ではないか。その後、ペンローズが意識の問題について何かを考えているのか、推測するしかない。マイクロチューブルはどうもdead endである。 posted at 08:59:15
  • ぺこ(9)Tononiのphi、siginal d. t. を始め、統計的な手法は、結局意識の問題解決の決め手にはならない(trivialに自明)。その意味では、数年後か何十年後か、根本的なパラダイム転換が必要。ペンローズが展開するような原理的な考察は、今でも必要とされている。 posted at 09:01:17
  • 以上、連続ツイート第1006回「ペンローズの、こと」でした。 posted at 09:02:43

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