ジョージ・オーウェルに「ビルマの日々」という作品がある。
物語には植民地の民を見下す英国人の姿が精密に書かれている。
こんな僻地に流れてきた彼らにとって唯一のプライドと安らぎの場が白人専用のクラブハウスだ。
クラブにはビルマ人の執事がいた。あるとき英国人の一人が「まだ氷は十分にあるか」と執事に聞く。
「20ポンド残っています。ご主人様」と執事。そして
「I find it very difficult to keep ice cool.」と付け加えた。
ちょっともちそうにもないと思います程の意味だが、それを聞いて英国人が怒り出す。
「I find it difficult だと。お前は英語の辞書を丸呑みしたのか。そんなときは can't keeping ice cool と言え。お前たちが小生意気な英語をしゃべるのを聞くくらい腹立たしいことはない」
土人たちは動詞の活用も冠詞もないピジン・イングリッシュをしゃべっていればいいのだ。
(週刊新潮 10月27日号 p.142 高山正之「変見自在」)
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