2011-12-20

書物ある人生(7)渡部昇一

月刊WiLL 1月号 p.300
「幾何学を解せざる者、この門に入るべからず」と、プラトンの学校では規則にしていた・・・「数学が解らないような者は学問に向いておらないぞ」という一種の嚇しの言葉として私は受け取った。

p.302
友から得た知的快感
 彼に数学を助けてもらっている時、「岩切の代数学がよいよ」と言われたので、さっそく古本屋で岩切晴二の『代数学精説』(培風館)を買った。そして1ページからやってみると、高級そうに見えた問題も解けるのである。
 それまで、戦前の受験参考書で数学を勉強するなどということを考えたこともなかったが、岩切の代数学で問題を解くこと、また解けたときの喜びを知ったのである。
 少年の時に数学の問題を一人で解くことができた時の喜びというのは、本当に心の底から、かすかながら確実に込み上げてくる知的快感であり、これを体験したことがあるなしは、その人の一生に関係があるような気がしてならない。
 ちょうど、今日開いてみた『産経新聞』(平成23年10月29日)に、TOSS代表の向山洋一氏が書いている話が載っている。中学校で数学ができず不登校になっている生徒に、中学1年からの数学を基本から教えたところ、「勉強ってこんなに楽しかったんだ」とつぶやき、その後、希望の高校に進み、成績は一番だったという。私はこの話を信ずる。それまで手の出しようがないと思われていた数学の問題が解けたという体験は、特別のものだからである。

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